「この製品、本当に効くの?」
私が美容機器メーカーのヤーマンで開発に携わる中で、常に向き合ってきた問いです。なぜなら現代では、商品の価値はスペックではなく、お客様の『体験価値』で決まるからです。今日は、その「体験価値」を最大化するために私が実践してきた、
開発アプローチについてお話しします。



開発の壁:なぜ、お客様の「本音」が聞けないのか?
商品開発の第一歩は顧客ニーズの把握ですが、美容領域ではこれが非常に難しい。特に開発者が男性だと「女性の肌の課題感は女性にしかわからない」という壁があります。では直接ヒアリングすれば良いかというと、そう簡単ではありません。
多くの女性は、美しくなるための努力をオープンに語ることにためらいがあるため、インタビューをしても
本音はなかなか出てきません。
解決策①:言葉ではなく「表情」を読む観察術
お客様が本音を語らないなら、言葉ではなく行動と表情を観察するしかありません。まずネットの美容アンケート等で市場の
課題仮説を立て、美容系の展示会に足を運びます。ブースで美容機器を試す女性たちをひたすら観察し、
体験前後で鏡の中の自分を見て何をチェックしているか、その表情の変化を見逃しません。
そして、表情が一瞬「パッ」と輝く瞬間があります。その「ときめき」こそが、私たちが提供すべき最高の「体験価値」のヒントであり、彼女たちの本当のニーズです。男性である私の感覚はあくまで仮説。お客様のリアルな反応こそが開発の羅針盤でした。
解決策②:「プロモーション」から逆算する開発プロセス
「ときめきポイント」の仮説が立てば、次は開発です。美容機器は、販売前に効果を実証する「エビデンス」が不可欠。そこで重要になるのが「プロモーションからの逆算思考」です。まず「この商品は、最終的にどんな言葉と映像で世の中に伝えたいか」を想像します。「驚くほどフェイスラインがスッキリ!」という「体験価値」を謳うなら、それを証明するエビデンスが必要です。
アイデアの源泉は、人気の美容医療や学会の最新情報。そこから「この技術なら、こんなエビデンスが取れるのでは」と
仮説を立て、開発と同時に効果検証を始めます。ゴールから逆算することで、マーケティングと開発が一体となった、
お客様の期待を超える商品が生まれます。
解決策③:五感に訴える「デザイン」と「使い勝手」
機能やエビデンスが固まっても、お客様が手に取らなければ意味がありません。美容機器は性能と同じくらい「デザイン」が重要です。ここでも女性目線が絶対です。デモ機を作り、女性モニターに何度も試してもらいます。持ちやすい重さや形か、
肌への当たり方は心地よいか。細かな仮説·検証を繰り返し、使う瞬間の心地よさや所有する喜びといったプロセス全体を
「体験価値」としてデザインしていくのです。
以上が私が学んだ、最高の「体験価値」を創出するための3つの要諦です。
このコラムが、皆様のモノづくりのヒントになれば幸いです。